空気環境測定とは?基準・方法・費用・義務の有無までやさしく解説

ビルやオフィス・商業施設など、快適で安全な環境を維持するうえで、室内の空気環境は見過ごせない要素の1つです。特に不特定多数の人が利用する施設では、空気中の二酸化炭素や浮遊粉じん、一酸化炭素などが健康に影響を及ぼすリスクもあるため、定期的な空気環境測定が求められます。しかし、「そもそも測定は義務なのか?」「どのような項目を測ればよいのか?」「費用はどの程度かかるのか?」といった疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、空気環境測定の基本知識から測定項目、頻度、方法、費用相場、さらには改善方法までをわかりやすく解説します。施設管理に携わる方は、ぜひ参考にしてみてください。

空気環境測定とは?

空気環境測定とは、建物内の空気が衛生的かつ安全な状態に保たれているかを確認するための調査です。特に不特定多数の人が利用する商業施設やオフィスビルなどの「特定建築物」では、建築物衛生法に基づき定期的な実施が義務付けられています。

測定項目は、一酸化炭素・二酸化炭素・浮遊粉じん・温度・湿度・気流の6つ。さらに、新築や大規模改修後などの状況に応じて、ホルムアルデヒドの測定も必要になります。

これらの数値は、利用者の健康や快適性に直接関わる重要な指標です。万が一、測定結果が基準を満たさない場合には、改善命令や使用制限が科されることもあるため、正確な測定と迅速な対応が求められます。

空気環境測定の主な対象施設

空気環境測定の対象となるのは、「特定建築物」と呼ばれる一定規模以上の施設です。具体的には、延べ床面積が3,000㎡以上(学校の場合は8,000㎡以上)で、不特定多数の人が利用する建物が該当します。

該当する施設の例としては、オフィスビルや百貨店、ショッピングモール、ホテル、病院、博物館、学校、遊技場などが挙げられます。これらの建物では、空調や換気設備によって空気が循環する構造となっているため、空気環境が悪化した場合には、利用者の健康に影響を及ぼすおそれがあります。

そのため、建築物衛生法に基づき、定期的な空気環境測定の実施が義務付けられています。なお、建物内に入居するテナントや利用者個人に測定義務はなく、原則として建物の所有者または管理者がその責任を負うことになります。

空気環境測定の測定項目と評価基準

空気環境測定では、室内の空気が健康的かつ快適な状態かどうかを確認するために、複数の項目を定められた方法と基準で評価します。ここでは、空気環境測定における主な測定項目と、それぞれに定められている評価基準について解説します。

義務付けられている主な測定項目

空気環境測定では、建築物衛生法に基づき、特定建築物に対して6項目の測定が義務付けられています。対象となるのは、一酸化炭素、二酸化炭素、浮遊粉じん、温度、湿度、気流の6つ。それぞれ、人の健康や快適性に深く関わる重要な指標です。

さらに、2022年の法改正によりホルムアルデヒドも追加され、新築や大規模修繕を行った建物では測定が必要とされています。

これらの項目は、専用の測定機器を用いて建物内の居室中央(床上75〜150cm)で測定されます。

各測定項目に定められた評価基準値

各測定項目には、建築物衛生法に基づいた評価基準値が設定されており、施設内の空気環境を維持するうえでの重要な目安となります。例えば、一酸化炭素は6ppm以下、二酸化炭素は1,000ppm以下、浮遊粉じんは0.15mg/㎥以下といった基準が定められています。

温度は18~28℃、湿度は40~70%、気流は0.5m/秒以下が目安とされ、さらにホルムアルデヒドについても0.1mg/㎥以下が基準値です。

空気環境測定の測定頻度

空気環境測定は、建築物衛生法により原則として年6回、2カ月に1回の頻度で実施することが義務付けられています。対象となるのは「特定建築物」に該当する施設で、測定の実施責任は所有者または管理者が負います。実際の測定作業は、資格を持つ専門業者に委託するケースが一般的です。

測定は、午前と午後の2回、同一地点で行われ、その平均値をもとに基準値との比較が行われます。これは、時間帯によって変化する空気環境(人の出入りや空調の使用状況など)を適切に反映させるためです。

さらに、新築や大規模な改修工事を実施した施設では、ホルムアルデヒドの追加測定が年1回(6〜9月)に限り求められています。

空気環境測定の測定方法

空気環境測定を正確に行うには、項目ごとの測定方法や機器の使い方、設置場所や高さなどに関するルールを理解しておくことが重要です。ここでは、空気環境測定における基本的な測定方法とそのポイントについて解説します。

温度・湿度・気流など各項目の測定方法

空気環境測定における温度・湿度・気流の測定は、専用機器を使い、室内中央かつ床上75〜150cmの高さで行います。温度には0.5度刻みの温度計、湿度には乾湿球湿度計を使用し、室内の気候状態を正確に把握します。

気流は、0.2m/秒以上の風速を検出できる風速計を用い、基準値である0.5m/秒以下であるかを確認します。測定は通常、午前と午後の2回に分けて同じ地点で実施し、それぞれの数値の平均を取って評価を行います。

測定機器の設置位置と高さのルール

空気環境測定では、測定値の正確性を保つために、機器の設置位置と高さに関するルールも定められています。基本的には、各階の居室中央部を測定点とし、機器は床上75〜150cmの同一の高さに設置します。この高さは、人の呼吸域に近く、実際の空気環境をより正確に反映できるとされているためです。

また、壁面や空調の吹き出し口などの影響を避けるため、これらから十分な距離を取って設置することが大切です。空間が広い場合は、床面積に応じて複数の測定点を設け、それぞれの場所で空気環境が均一に保たれているかも確認します。

1日に2回実施する測定の時間帯と手順

空気環境測定は、午前と午後の2回に分けて実施することが原則です。具体的には、始業後から昼前の時間帯に1回目を、午後の業務時間中に2回目を行い、いずれも同じ測定点で実施します。

このように時間帯を分けるのは、人の出入りや空調使用による環境変化を反映し、より正確な測定結果を得るためです。測定値は2回分の平均を取り、法定基準との比較評価に用いられます。

測定時は、温度や湿度、気流が安定していることが望ましく、空調を稼働させた状態で行うのが一般的です。

測定結果の記録・評価・報告の流れ

空気環境測定は、数値を取得するだけでなく、その後の記録・評価・報告までを含めて対応することが求められます。測定値は記録シートに正確に記載し、測定場所・実施時刻・空調の運転状況などの条件とあわせて保存しましょう。

こうして蓄積されたデータは、法定の評価基準と照らし合わせて確認され、基準を超える項目があれば改善措置を検討する必要があります。評価を終えたら、建物の所有者または管理者が報告書を作成し、保健所の立入検査やテナントからの問い合わせに備えます。

近年では、クラウドシステムを活用したデータ管理や報告書の共有も普及しており、ペーパーレスでの運用や管理効率の向上が図られています。

空気環境測定にかかる費用相場

空気環境測定の費用は、施設の規模や測定ポイントの数によって変動します。一般的には、基本料金に加え、測定ポイントごとの追加料金を合算した金額が総費用の目安となります。

多くの業者では、基本料金が15,000〜20,000円前後に設定されており、これに加えて1ポイントあたり1,000〜3,000円程度の費用が加算される仕組みです。

例えば、9ポイントの測定を行う場合は、全体で2万〜3万円程度が相場です。ただし、施設の所在地によっては出張費やエリア外交通費が別途発生することもあります。また、早朝や休日の対応には追加料金がかかるケースもあるため注意が必要です。

見積もりを依頼する際は、報告書の作成費用や交通費が含まれているかどうかを事前に確認しておくと安心です。

空気環境測定を専門業者に依頼するメリット

空気環境測定は法律に則った正確な手順で行う必要があり、専門的な知識や専用機器を要する作業です。ここでは、空気環境測定を専門業者に依頼することのメリットについて解説します。

精度の高い測定で正確な空気環境データが得られる

空気環境測定を専門業者に依頼するメリットの1つは、精度が高く信頼性のあるデータを取得できる点です。専門業者は、建築物衛生法で定められた基準に基づき、各測定項目に適した認定機器を使用して測定を行います。

また、機器の較正や測定環境の安定化など、精度を確保するための手順も徹底されています。そのため、誤差が少なく、再現性の高いデータが得られます。

特に、施設が広い場合や測定箇所が多い場合には、自社での対応では測定結果にばらつきが出ることもあります。そうした中でも、専門業者であれば統一された基準のもとで測定が実施されるため、データの一貫性と正確性が保たれやすくなります。

法令に準拠した報告書をスムーズに提出できる

空気環境測定を専門業者に依頼することで、建築物衛生法などの関連法令に準拠した報告書を、スムーズに提出できます。測定項目や手順、評価基準は法令で細かく規定されており、記録の内容や提出時の書式にも一定のルールが設けられています。

専門業者はこうした要件を熟知しており、保健所の立入検査や定期報告に対応した書類を漏れなく整備してくれるため、安心して任せられます。クラウドシステムによるデータ管理やオンラインでの報告にも対応している業者であれば、報告作業の手間をさらに軽減できるでしょう。

自社での対応工数を削減できる

空気環境測定を専門業者に依頼することで、自社で対応する場合に発生する多くの工数を大幅に削減できます。例えば、測定機器の準備や設置、測定ポイントの選定、1日2回にわたる計測、データの記録・評価、そして報告書の作成まで、一連の工程には高い専門性と手間が求められます。

特に、建築物衛生法に基づく測定では、法令に準拠した正確な運用が必要となるため、社内での知識習得や人的リソースの確保が負担になりがちです。専門業者に委託すれば、これらの煩雑な作業をまとめて任せることができ、本来の業務に集中しながらも法令遵守と品質管理の両立が可能になります。

トラブル時も専門的なサポートが受けられる

空気環境測定の結果が基準値を超えていたり、換気設備などに不具合が見つかったりした場合、自社だけで対応するのが難しいケースも少なくありません。そうした場面でも、専門業者に依頼していれば、原因の特定から改善策の提案まで一貫したサポートが受けられます。

例えば、換気機能の不備やカビの発生源の特定など、専門知識と経験を要する問題にも、プロの視点から迅速かつ的確に対応してもらえます。さらに、行政機関から改善報告を求められた際も、業者が作成した報告書をそのまま提出できるため、社内での事務手続きの負担を大きく軽減できます。

空気環境を改善する方法

空気環境の測定結果が基準値を超えていた場合、早急な改善措置が求められます。ここでは、空気環境を改善するための代表的な方法について解説します。

機械換気を活用して汚れた空気を効率的に排出する

空気環境の改善において、機械換気の導入は効果的な手段の1つです。特に密閉性の高い建物では自然換気が不十分になりやすく、二酸化炭素や浮遊粉じん、湿気などが室内に滞留しがちです。

機械換気設備を導入すれば、外気を安定して取り込みながら、汚れた空気を効率的に排出できます。これにより、室内の空気を常に清潔な状態に保ちやすくなります。

さらに、建築物環境衛生管理基準では、1人あたり毎時30㎥以上の換気量を確保することが推奨されており、適切な換気は基準値を満たすためにも重要な要素といえます。

高性能空気清浄機を設置して微粒子や有害物質を除去する

室内の空気には、目に見えない微粒子や有害物質が数多く存在しています。こうした物質を取り除き、空気環境を清潔に保つには、高性能な空気清浄機の導入が効果的です。

なかでも、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機は、PM2.5や花粉、細菌、ウイルスなどを99.97%以上除去できる性能を備えており、衛生環境の改善に大きく貢献します。

また、構造上換気が難しい建物では、空気清浄機が実質的な空気循環装置としても機能します。これにより、二酸化炭素や浮遊粉じんの濃度を効果的に抑えることが可能です。

空調設備を定期的に点検・清掃して汚染源を排除する

空気環境を良好に保つには、空調設備の定期的な点検と清掃も大切です。フィルターの目詰まりやダクト内部の汚れを放置すると、カビや細菌、粉じんなどの汚染物質が室内に再び循環し、空気の質が悪化してしまいます。

特に湿度の高い時期や人の出入りが多い施設では、空調内部に汚れがたまりやすく、清掃を怠ると異臭の発生や冷暖房効率の低下につながるおそれもあります。

建築物衛生法でも、空気調和設備や機械換気設備の点検・清掃は定期的に実施することが義務付けられており、計画的な保守管理が求められます。

空気環境測定の実施で安心・安全な施設運営を目指そう

空気環境測定は、法令遵守という面だけでなく、施設を利用するすべての人々の健康と快適性を守るためにも欠かせない取り組みです。適切な測定と評価を継続的に行うことで、空調や換気の不備を早期に発見し、トラブルやクレームを未然に防ぐことができます。

さらに、専門業者に依頼することで、法定基準への対応や報告書作成といった煩雑な作業も効率化できるため、総務・管理部門の負担軽減にもつながります。近年では、クラウドを活用した管理や空気清浄機の導入など、より高精度で柔軟な対応も可能になってきています。まずは現状の把握から始め、計画的な空気環境管理に取り組んでいきましょう。

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