天井にすっきりと収まるビルトインエアコンは、見た目の美しさや空間の有効活用ができる点から、住宅や店舗で人気の高い設備です。しかしその反面、「風量が弱くなった」「カビ臭が気になる」「掃除の仕方がわからない」といった悩みを抱える方も少なくありません。ビルトインタイプは構造が複雑なため、汚れが蓄積しても気づきにくく、放置すると冷暖房効率の低下や健康被害の原因になることもあります。
そこで今回は、自分でできる掃除の方法と、プロに依頼すべきポイント、掃除の頻度や費用の目安についてわかりやすく解説します。快適な空気環境を保つためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

目次
ビルトインエアコンとは?
天井に埋め込んで設置するビルトインエアコンは、見た目がすっきりしており、住宅や店舗などで人気の高い空調設備です。ここでは、ビルトインエアコンの特徴や仕組みについて解説します。
ビルトインエアコンは天井に埋め込んで設置するエアコンのこと
ビルトインエアコンとは、天井に埋め込む形で設置される空調機器のことで、室内の美観を損ねず、すっきりとした空間を実現できる点が特徴です。
一般的な壁掛け型エアコンとは異なり、本体の大部分が天井裏に隠れるため、露出するのは吹き出し口や操作パネルのみとなります。そのため、インテリア性を重視する住宅や、限られたスペースを有効活用したい店舗・オフィスなどで多く採用されているのです。また、風の流れを天井全体でコントロールできるため、部屋の隅々まで均一に空調が届きやすく、快適な空間づくりにも貢献します。
一方で、構造上の特性から掃除やメンテナンスが見落とされやすく、定期的な点検や清掃が欠かせません。設置後も清潔な空気環境を維持するためには、構造を正しく理解することが第一歩です。
吹き出し口の数によって1方向・2方向・4方向のタイプに分かれる
ビルトインエアコンは、吹き出し口の数や方向によって複数のタイプに分かれています。それぞれの特徴は以下のとおりです。
| タイプ | 吹き出し方向 | 特徴 |
| 1方向タイプ | 一方向 | 壁際や狭い空間に適しており、必要なエリアのみを効率良く冷暖房できる構造です。 |
| 2方向タイプ | 左右の両方向 | 縦長の部屋や通路などで均等に空調が行える設計です。 |
| 4方向タイプ | 四方向 | リビングやオフィスなど広い空間でもムラなく快適な空調を実現できます。 |
吹き出し口の数によって風の流れ方や掃除のしやすさが異なるため、清掃時には構造を事前に確認することが重要です。
ビルトインエアコンの掃除が必要なサイン
ビルトインエアコンは、天井に埋め込まれている構造上、内部の汚れに気づきにくく、掃除のタイミングを見逃しがちです。ここでは、ビルトインエアコンの掃除が必要となる代表的なサインについて解説します。
エアコンからカビ臭や酸っぱいニオイがする
エアコンの使用時にカビ臭や酸っぱいニオイを感じる場合、内部にカビや雑菌が繁殖しているサインです。特に湿度の高い梅雨時期や、長期間掃除を行っていない場合に発生しやすくなります。ビルトインエアコンは天井に埋め込まれている構造上、内部の汚れに気づきにくく、見えない部分でホコリや湿気がたまりやすい傾向があります。
嫌なニオイの原因は、フィルターの目詰まりだけでなく、送風ファンやドレンパンのカビが影響しているケースも少なくありません。放置すると空気中に雑菌が拡散され、健康被害やアレルギーのリスクにもつながります。ニオイを感じたら早めに掃除を検討し、必要に応じて専門業者に依頼することが重要です。
咳やくしゃみなどアレルギー症状が出たら
エアコンの使用中に咳やくしゃみ、目のかゆみなどのアレルギー症状が出る場合は、内部にカビやハウスダスト、花粉などのアレルゲンが蓄積している可能性があります。ビルトインエアコンは天井に設置されているため、汚れや異変に気づきにくく、知らず知らずのうちに空気中へアレル物質を拡散してしまうこともあります。
特にフィルターの目詰まりや送風ファンのカビ汚れが原因となるケースが多いため、体調の変化に気づいたら、早めにエアコンの清掃を検討しましょう。アレルギー体質の方がいる場合は、こまめなフィルター掃除に加え、内部の専門洗浄を定期的に行うことが大切です。
冷暖房の効きが悪いと感じたら
冷暖房の効きが以前より悪いと感じた場合は、ビルトインエアコン内部の汚れが原因となっている可能性があります。特にフィルターの目詰まりや送風ファンのホコリ蓄積は、風量の低下や熱交換効率の低下を引き起こし、部屋全体がなかなか冷えない・暖まらない状態につながる原因です。設定温度を下げても効きが改善されないときは、内部のカビや汚れが影響しているケースも多く見られます。
また、無理に稼働を続けることで電力消費が増え、電気代の無駄にもつながります。効きの悪さを感じたら、まずはフィルターの汚れを確認し、必要に応じて専門業者に内部洗浄を依頼するのがおすすめです。
送風音や作動音が以前より大きいと感じたら
ビルトインエアコンの送風音や作動音が以前より大きく感じられる場合は、内部にホコリやカビが蓄積しているサインかもしれません。特に送風ファンやフィルターが汚れていると、モーターに負荷がかかり、運転音が通常よりも大きくなることがあります。さらに、ファンバランスが崩れると振動が発生し、異音の原因になることも。
日常的に使用していると音の変化に気づきにくいものの、「最近うるさくなった」と感じたときは、掃除のタイミングと考えましょう。まずはフィルターの状態を確認し、改善が見られない場合は専門業者による内部洗浄を検討するのが安心です。
自分でできるビルトインエアコンの掃除方法
天井に設置されたビルトインエアコンは、見た目がすっきりしている反面、掃除がしにくく汚れに気づきにくいという特徴があります。ここでは、ビルトインエアコンを自分で掃除する方法について解説します。
まずはブレーカーを落として安全を確保する
ビルトインエアコンを自分で掃除する前に、必ずブレーカーを落として電源を遮断しましょう。電源が入ったままの状態で作業を行うと、感電や機器の故障につながる恐れがあります。特に天井に設置されたビルトインタイプは、脚立を使用して高所での作業を行うことが多いため、安全対策は万全に整える必要があります。
リモコン操作で電源を切っただけでは通電している可能性があるため、必ず分電盤からエアコンのブレーカーをオフにしてください。作業中に誤って電源が入るのを防ぐため、ブレーカーのスイッチに「作業中」などのメモを貼っておくのも有効です。
前面パネルを開けてフィルターを取り外す
前面パネルの開閉は、ビルトインエアコンのフィルター掃除において最初のステップです。ブレーカーを落として安全を確保した後、脚立などを使って本体に手が届くようにし、パネルの両端にあるツメやロック部分を確認しましょう。多くの機種では、手前に引く、もしくは下向きに開けるタイプが一般的です。パネルを開けると、内部に長方形のフィルターが複数枚セットされていることが多く、両手で軽く押さえながらゆっくりと引き抜くことで取り外せます。
無理に引っ張ると破損の原因になるため、取り扱いには注意が必要です。フィルターは取り外した直後にゴミ袋などの上に置き、ホコリの飛散を防ぐことも大切です。フィルターの取り外しまで完了すれば、掃除の準備は整います。次のステップでは、ホコリの除去や水洗いを行いましょう。
フィルターとパネルのホコリを掃除機で吸い取る
取り外したフィルターと前面パネルには、空気中のホコリやチリが多く付着しています。まずは乾いた状態のまま、掃除機を使ってホコリを丁寧に吸い取りましょう。フィルターの表面だけでなく、裏側からも吸い込むことで目詰まりをしっかり解消できます。ブラシノズルなどを活用すると、網目に入り込んだ細かい汚れまで取り除きやすくなります。
パネルも同様に、溝や角にたまったホコリを逃さず吸い取ることが大切です。ここでホコリを除去しておくことで、水洗い時の汚れの広がりを防ぎ、作業効率も高まります。ホコリを吸い取るだけでも風量の改善やニオイの軽減が期待できるため、念入りに行いましょう。掃除機を使う際は、吸引力の強すぎる設定を避け、フィルターを傷めないよう注意してください。
水洗いしたフィルターはしっかり乾燥させる
フィルターを水洗いした後は、必ず完全に乾かしてから元に戻しましょう。水分が残った状態で本体に取り付けると、カビの発生や故障の原因となる恐れがあります。乾燥には直射日光を避け、風通しの良い日陰で自然乾燥させるのが理想です。ドライヤーなどの高温で無理に乾かすと、フィルターの素材が変形する可能性があるため注意が必要です。
また、乾燥中にホコリが再付着しないよう、清潔な場所で保管しましょう。見た目が乾いていても内部に水分が残っているケースもあるため、数時間〜半日程度の余裕を持ってしっかりと乾燥させることが大切です。乾燥が不十分なままエアコンを稼働させると、せっかくの掃除が無駄になってしまうため、仕上げとして丁寧な乾燥工程を心がけましょう。
乾いた部品を元に戻して送風運転で仕上げる
フィルターやパネルが完全に乾いたら、正しい位置に戻して組み立てます。取り外した順番を思い出しながら、フィルターの上下や裏表を間違えないように装着しましょう。
パネルのツメやロック部分がしっかり固定されているか確認したうえで、ブレーカーを戻して電源を入れます。その後、冷暖房機能ではなく「送風運転」で30分ほど稼働させ、内部の残った水分を乾かすのがおすすめです。送風によって内部の湿気を飛ばすことで、カビの発生やニオイの再発を防ぐことができます。
掃除後は風量や運転音を確認し、正常に作動していれば完了です。作業後に異音や異臭がする場合は、フィルターの取り付けミスや内部汚れの残りが原因の可能性もあるため、再確認するか専門業者への相談を検討しましょう。
ビルトインエアコン掃除はどこまでが自分でOK?プロに依頼すべき範囲とは
ビルトインエアコンは見た目がすっきりしている反面、掃除の難易度が高く、どこまで自分で対応できるのか迷う人も少なくありません。ここでは、ビルトインエアコン掃除の「自分でできる範囲」と「プロに任せるべき範囲」について解説します。
送風ファンやアルミフィンの内部洗浄
送風ファンやアルミフィンは、ビルトインエアコンの空気循環に関わる重要な部品です。しかし、これらの内部にホコリやカビが蓄積すると、風量の低下やニオイの発生、冷暖房効率の悪化につながります。特に送風ファンは構造が複雑で、自力での洗浄は難易度が高いです。
また、アルミフィンは非常に繊細な素材で、無理な掃除は破損や性能低下を招く恐れがあります。そのため、これらの部位の清掃は専門業者に依頼するのが安心です。専用の高圧洗浄機や薬剤を用いることで、細部までしっかり汚れを除去でき、空気の質やエアコンの性能を回復させる効果が期待できます。定期的な内部洗浄により、快適で清潔な空間を維持しましょう。
ドレンパンやドレンポンプの洗浄
ビルトインエアコンの内部には、空気中の湿気を受け止めて排出するためのドレンパンとドレンポンプが搭載されています。これらに汚れやカビがたまると、水漏れや悪臭の原因になるだけでなく、排水不良による故障リスクも高まる可能性があるため注意が必要です。特にドレンポンプは排水を強制的に屋外へ送る装置のため、詰まりや動作不良があるとエアコン本体の誤作動や停止につながることもあります。
これらの部品は天井裏に隠れていることが多く、構造も複雑なため、自分での掃除は困難です。無理に分解すると破損や漏電の危険もあるため、ドレン系統の洗浄は専門業者に依頼するのが安全です。定期的なメンテナンスにより、水漏れやニオイのトラブルを未然に防ぎましょう。
熱交換器の洗浄
熱交換器は、室内の空気を冷やしたり温めたりする中核部品であり、ここにホコリやカビが付着すると、冷暖房効率の低下や異臭の原因になります。ビルトインエアコンの熱交換器はアルミ製のフィンで構成されており、非常に繊細なため、自分で無理に掃除を行うと破損や変形につながる恐れがあるため注意が必要です。
また、高所作業や天井裏での分解作業が必要になるケースも多く、危険が伴います。このため、熱交換器の洗浄は専門業者に任せるのが一般的です。業者は専用の洗浄薬剤や高圧洗浄機を用いて、見えにくい部分まで丁寧に洗浄を行い、カビや細菌の除去、エアコン性能の回復を図ってくれます。快適な室内環境を維持するためには、1〜2年ごとの定期的なプロによる内部洗浄が推奨されます。
内部パーツを分解しての洗浄
ビルトインエアコンの内部には、送風ファンやアルミフィン、熱交換器など多くの精密な部品が組み込まれており、これらを分解しての洗浄には専門的な知識と技術が求められます。天井に埋め込まれた構造のため、部品の取り外しには高所作業や天井裏での作業が必要になり、誤った分解は破損や感電リスクを伴うため非常に危険です。
また、分解後の洗浄には専用の高圧洗浄機や薬剤を使用する必要があり、個人での対応は現実的ではありません。こうした内部パーツの分解洗浄は、必ず専門業者に依頼するようにしましょう。プロに任せることで、目に見えない汚れまでしっかり除去でき、エアコン本来の性能を回復させることができます。清潔な空気環境を保つためにも、定期的なプロのメンテナンスが重要です。
ビルトインエアコンの掃除頻度はどれくらい?
ビルトインエアコンは天井に設置されているため、汚れやカビの蓄積に気づきにくく、掃除のタイミングを逃しやすい特徴があります。ここでは、ビルトインエアコンの適切な掃除頻度について解説します。
基本の掃除頻度は1〜2年に1回が目安
ビルトインエアコンは天井に埋め込まれている構造上、汚れに気づきにくく、つい掃除のタイミングを逃してしまいがちです。しかし、フィルターや内部パーツにホコリやカビが蓄積すると、冷暖房効率の低下やニオイ・アレルギーの原因になります。そのため、基本的な掃除頻度としては1〜2年に1回を目安に、専門業者による内部洗浄を検討するのが安心です。
特に天井裏の送風ファンや熱交換器などは、自分での清掃が難しく、定期的なプロのメンテナンスが推奨されます。普段から異音・ニオイ・効きの悪さなどに気づいたら早めの対処を心がけ、快適な空気環境を保ちましょう。
ペットやキッチンがある家庭では年1回の掃除が推奨
ペットを飼っている家庭やキッチンの近くにビルトインエアコンを設置している場合は、通常よりも汚れが蓄積しやすいため、年1回の掃除が推奨されます。ペットの毛やフケはフィルターに詰まりやすく、空気中に舞ったままの状態ではニオイの原因にもなるため注意が必要です。また、キッチン付近では油分を含んだ蒸気がエアコン内部に吸い込まれ、ホコリと混ざってこびりつくことで、冷暖房効率の低下や悪臭の原因となることがあります。
こうした汚れは放置すると落としづらくなり、故障やカビの発生にもつながります。特にアレルギー体質の家族や小さな子どもがいる家庭では、清潔な空気環境を保つためにも定期的なメンテナンスが欠かせません。自分での清掃に加えて、年1回は専門業者による内部洗浄を検討しましょう。
エアコンの使用時間が長い場合は毎年の掃除が必要
エアコンの使用時間が長い家庭や店舗では、内部にホコリやカビがたまりやすく、年1回の定期的な掃除が必要です。特に長時間稼働が続く夏場や冬場は、フィルターや送風ファンに汚れが蓄積しやすく、放置すると風量低下や異臭の原因になります。
また、汚れた状態での運転は熱交換効率の低下を招き、電力消費の増加や機器の寿命短縮にもつながります。使用頻度が高い場合は、フィルター掃除をこまめに行うとともに、年1回を目安に専門業者による内部洗浄を検討しましょう。清掃によってエアコン本来の性能を保ち、快適で衛生的な空気環境を維持できます。
ビルトインエアコン掃除で快適な空間を維持しよう
ビルトインエアコンは天井に設置されているため、汚れに気づきにくく、掃除のタイミングを逃しやすい空調機器です。しかし、定期的な清掃を怠ると、風量の低下や嫌なニオイ、アレルギー症状の原因となり、快適な空間が損なわれてしまいます。フィルター掃除やパネルのホコリ取りなどは自分でも対応できますが、送風ファンや熱交換器、ドレン系統の洗浄は専門業者に任せるのが安全です。
使用環境や稼働時間に応じて、掃除の頻度を見直すことも重要です。自分でできる部分はこまめに掃除しつつ、必要に応じてプロの力を借りて、清潔で心地よい空気環境を維持しましょう。