厨房エアコンの選び方|スポット・ダクト式の違いや最適な設置方法を解説

厨房内の暑さに悩んでいませんか?火を扱う厨房は、他の作業空間に比べて高温・多湿になりやすく、特に夏場はスタッフの体力や衛生環境に大きな負担をかけてしまいます。快適で安全な厨房環境を保つためには、適切な空調設備の導入が欠かせません。

そこで今回は、厨房向けのエアコン選びに役立つ情報として、「スポット型」と「ダクト式」の特徴や違い、設置時のポイントなどをわかりやすく解説しています。厨房の広さや作業内容、換気設備とのバランスなど、検討すべき視点も踏まえながら、現場に最適な冷房環境を整えるヒントをお届けします。

飲食店オーナーや設備担当者の方は、空調の選定に迷った際の参考にしてみてください。

厨房エアコンはなぜ重要?

厨房では、火を使った調理が日常的に行われるため、一般的な空間と比べて温度や湿度が非常に上がりやすい傾向があります。特に夏場は熱中症のリスクが高まり、スタッフの体調不良や作業効率の低下を引き起こすおそれも否めません。

こうした環境を改善するには、厨房専用の空調設備を導入することが欠かせません。適切なエアコンを選ぶことで、作業空間の快適さが保たれやすくなり、衛生面の維持や調理機器の過熱トラブルの予防にもつながります。

また、厨房環境の整備は、結果的に料理の提供スピードや品質にも影響を与えます。回転率やサービスレベルの安定化という点でも、空調は経営に直結する重要な設備投資といえるでしょう。

厨房用エアコンの種類と特徴

厨房の空調設備にはさまざまな種類があり、それぞれに適した使い方があります。ここでは、厨房に導入される代表的な3種類のエアコンについて、それぞれの構造や特徴を順に解説します。

スポットエアコンとは?

スポットエアコンは、限られた範囲にだけ冷風を送るタイプの冷房機器です。室内全体を冷やすのではなく、作業する人の近くをピンポイントで冷却できるため、厨房のように高温になりやすい現場では特に重宝されます。調理機器の熱や湿度がこもりがちな環境でも、スタッフの立ち位置に合わせて効率よく冷却できるのが大きな特長です。

本体は移動式の床置き型が主流で、ダクトを使って排熱を屋外に逃がす仕組みになっています。設置の手軽さや柔軟な運用が可能なことから、据え置き型と比べて初期導入のハードルが低い点も魅力といえるでしょう。

ただし、冷却の範囲は局所的になるため、大規模な厨房や複数人が同時に作業を行う場合には、すべての作業スペースをカバーするのは難しいことも。そうした場合は、他の空調機器との併用を検討するのがおすすめです。

ダクト式エアコンとは?

ダクト式エアコンは、天井裏などに本体を設置し、ダクト(送風管)を通じて冷風を各所に送り出す空調方式です。複数の吹き出し口を設けることで厨房全体の空気を効率よく循環させ、空間全体をムラなく冷却できるのが特長です。

厨房内に熱源が多い場合でも、冷気を分散して届けられるため、スポット型では対応しきれない広範囲な温度管理が可能となります。また、本体が天井内に収まることで、見た目がすっきりし、作業スペースを圧迫しない点もメリットです。

一方で、設置には天井裏のスペース確保や専門的な施工が必要となるため、導入コストや工期は比較的高くなります。

業務用パッケージエアコンとの違い

業務用パッケージエアコンは、主に店舗やオフィスなど広い空間を効率的に冷やすことを目的とした汎用型の空調設備です。天井吊り下げ型や床置き型など設置形式が多彩で、広範囲の冷房に適しています。

一方で、厨房のように高温多湿かつ油煙が発生しやすい環境では、パッケージエアコンのみでは対応しきれないケースもあります。特に、冷気の循環が不十分になりやすく、冷房効果が限定されることも少なくありません。

これに対して、厨房専用に設計されたスポットエアコンやダクト式エアコンは、耐熱性や防油性に優れ、熱源付近の局所的な温度上昇にも対応できる構造となっています。さらに、厨房内では風の向きや設置場所にも工夫が求められるため、厨房用エアコンのほうが冷却効率や作業快適性の面で適しています。

スポットエアコンのメリット・デメリット

厨房用のスポットエアコンは、特定の作業エリアをピンポイントで冷却できるのが最大の特長です。火元付近や高温になりやすい調理ポジションに直接風を送ることで、作業者の負担を軽減し、熱中症リスクの低減にもつながります。

また、据え置き型や移動式タイプが多く、工事不要で導入できる点も魅力です。一方で、厨房全体を均一に冷やすには不向きで、広範囲の温度管理が必要な現場では冷房効果が限定的となる場合があります。

以下にスポットエアコンのメリット・デメリットを整理しましたので、参考にしてみてください。

メリットデメリット
ピンポイントで冷風を当てられる厨房全体の温度管理には不向き
設置工事が不要な製品が多く、導入が容易冷気の届かない場所では効果が薄い
移動式なら必要に応じて設置場所を変更できる排熱ダクトの処理が必要で設置場所に制限がある
小規模店舗や一人作業に適しておりコストも抑えられる作業人数が多い厨房では冷却が不十分になりやすい

ダクト式エアコンのメリット・デメリット

厨房全体を快適に冷却したい場合には、ダクト式エアコンがおすすめです。天井裏に本体を設置し、ダクトを通じて冷風を分配できるため、広い空間や複数人が同時に作業する厨房でも、温度を均一に保ちやすくなります。

吹き出し口を複数設置できる構造により、熱がこもりやすいエリアにも冷風を効率よく届けられるのが特長です。また、機器本体が天井内に収まることで、作業スペースを圧迫しない点も大きなメリットといえるでしょう。

ただし、導入には専門的な設計や施工が必要となり、初期費用や工期が比較的かかる点には留意が必要です。以下に、ダクト式エアコンの主なメリットとデメリットをまとめました。

メリットデメリット
厨房全体をムラなく冷却できる初期費用や工事コストが高い
複数の吹き出し口で効率的に冷風を配分できる設置には天井裏などの十分なスペースが必要
本体が天井内に収まるため作業スペースを邪魔しない導入には専門業者による設計・施工が求められる
見た目がすっきりして店舗全体の美観を損ねにくい導入後のダクト配置変更が難しく柔軟性に欠けることもある

厨房環境に合わせたエアコン選びのポイント

厨房に適したエアコンを選ぶ際は、単に機種や価格だけでなく、設置環境や運用状況に応じた視点が欠かせません。ここでは、厨房環境に応じたエアコン選びの具体的なポイントを4つの観点から解説します。

厨房の広さとレイアウトに合わせて選ぶ

厨房用エアコンを選ぶうえで、まず把握しておきたいのが、厨房の広さや形状、調理スペースのレイアウトです。厨房は店舗ごとにレイアウトが大きく異なるため、最適な空調方式を選定するには、現場環境の理解が欠かせません。

例えば、スペースが限られ、作業エリアが明確に分かれている厨房では、必要な場所だけを効率よく冷却できるスポットエアコンが便利です。移動式タイプなら設置も手軽で、作業環境の変化にも柔軟に対応できます。

一方、厨房全体に作業スペースが広がっている場合には、ダクト式エアコンの導入が効果的です。天井裏に本体を設置し、複数の吹き出し口から冷風を供給することで、空間全体をムラなく冷却できます。

また、厨房では調理機器や壁の配置によって風の流れが妨げられることも少なくありません。冷風がしっかり行き届くよう、風の通り道や吹き出し口の位置にも配慮する必要があります。

厨房の構造や作業動線を踏まえ、無駄のない冷房環境を整えることが、快適で効率的な厨房づくりの第一歩といえるでしょう。

熱源や作業動線を考慮して配置を決める

厨房内にエアコンを設置する際は、火を使う機器の位置や、調理スタッフの動線を意識した冷風の送り方が重要です。例えば、ガスコンロやフライヤー、オーブンといった熱源の周辺は温度が特に上がりやすいため、そこに冷気を優先的に届けることで、局所的な暑さを和らげることができます。

また、冷風が直接顔や手元に当たると、不快感や作業への集中力低下につながることもあるため、動線を妨げず、自然な風の流れをつくる設置位置を選ぶことが大切です。吹き出し口の高さや角度にも配慮して、快適な作業空間を整えましょう。

さらに、油煙や蒸気が冷風の流れを遮らないように、換気扇や排気フードとの位置関係にも注意が必要です。

換気や排気とのバランスを調整する

厨房にエアコンを導入する際は、換気や排気設備とのバランス調整も欠かせません。特に、強力な排気フードや換気扇を使用している厨房では、室内の空気とともにエアコンの冷気まで外に逃げてしまうことがあります。その結果、冷房効率が落ちてしまい、電力コストの増加にもつながりかねません。

こうしたロスを防ぐには、給気口の設置や外気を取り込む換気システムとの併用が効果的です。また、排気の流れと冷風の向きが干渉しないように、エアコンの吹き出し口の角度や設置場所にも配慮する必要があります。

さらに、厨房内の空気が効率よく循環するよう設計すれば、冷気が特定の場所に滞留せず、快適な作業環境の維持につながります。

用途や使用時間に応じて冷房能力を見極める

厨房用エアコンを選定する際は、単に面積や定格能力だけで判断するのではなく、実際の用途や稼働時間を踏まえた冷房能力の見極めも大切です。

例えば、昼夜問わず営業する飲食店や、長時間にわたって大量調理を行うセントラルキッチンでは、高温状態が慢性的に続くため、冷却能力にゆとりのある機種が適しています。対して、ランチ営業中心の店舗や稼働頻度の低い厨房では、必要最低限の能力で十分なケースもあるでしょう。

また、稼働時間が短くても急激に温度が上昇する環境では、立ち上がりが早く高出力なタイプのほうが効率的です。このように、運用実態に即した空調設計を行うことで、過不足のない快適な環境づくりにつながります。

暖房エアコン導入時の業者選びのコツ

厨房用の暖房エアコンを導入する際は、単に製品の性能や価格だけでなく、施工を依頼する業者の選定も非常に重要です。ここからは、業者選びで失敗しないための具体的なポイントを詳しく見ていきましょう。

厨房空調の施工実績を確認する

厨房用空調の導入を検討する際には、快適な作業環境を実現するためにも、信頼できる業者の選定が重要です。なかでも注目したいのが、厨房空調に特化した施工実績の有無です。

厨房は、高温・多湿に加え、油煙が多く発生するなど、一般的な空間とは異なる過酷な環境にあります。そのため、一般的な空調設備の知識だけでは対応が難しく、専門的なノウハウが必要です。施工実績が豊富な業者であれば、これまでの経験をもとに、厨房のレイアウトや用途に応じた最適な機器選定や配置を提案してくれるでしょう。そうした対応によって、導入後のトラブルを未然に防げる点も大きなメリットです。

導入前には、業者の公式サイトや施工事例をチェックし、自店舗と同規模・同業種での実績があるかを確認することをおすすめします。

見積もり内容と対応範囲を比較する

厨房用エアコンの導入を検討する際は、複数の業者から見積もりを取り、金額だけでなくその中身や対応範囲までしっかりと比較することも大切です。工事費や機器代のほかに、現地調査・設計・配線・試運転・保証対応といった項目が含まれているかを、一つひとつ丁寧に確認しておきましょう。

見積書に「一式」とだけ記載されている場合は、具体的にどこまでの作業が対象になっているのか、事前に業者へ確認することが欠かせません。また、後から追加費用が発生する可能性の有無や、対応エリア・アフターサポートの内容についても忘れずチェックしておきたいところです。

業者によってサービス内容や対応範囲には違いがあるため、単純に価格だけで判断せず、自店の厨房環境に適した提案がされているかどうかを見極める視点が求められます。

アフターサポートの有無を確認する

厨房エアコンを導入した後も快適な作業環境を維持するためには、導入時の設備だけでなく、アフターサポートの体制にも目を向けておくことが大切です。厨房は高温・多湿なうえ、油煙などの影響もある過酷な環境であり、空調機器にかかる負荷も大きくなりがちです。そのため、定期的な点検や突発的なトラブル対応が必要になる場面も少なくありません。

いざという時に迅速なサポートを受けられるよう、修理対応の有無や受付時間、部品の在庫状況などは契約前にしっかり確認しておきましょう。業者によっては、点検や清掃を含んだ保守契約を用意している場合もあり、こうしたサービスを活用することで故障の予防や修理コストの削減につながることもあります。

また、導入から一定期間の保証内容についても明確にしておくことが重要です。初期不良や設置ミスといったトラブルが発生した際にも、安心して対応を受けられるようになります。こうしたサポート体制の有無は、業者を選ぶうえでの信頼性を見極める判断材料の1つとなります。

施工後のトラブル対応力を見極める

厨房用エアコンの導入においては、設置後のトラブル対応力も業者選びの大切なポイントとなります。実際の運用が始まってから、異音や冷房効率の低下、水漏れなど、予期せぬ不具合が発生するケースは少なくありません。

そうした事態に対して、どれだけ迅速かつ的確に対応してもらえるかで、店舗運営への影響も大きく変わってきます。万が一のトラブル時にも安心できるよう、事前に対応実績やレスポンスの早さ、緊急時の連絡体制などをチェックしておきましょう。

また、施工ミスや初期不良に対する保証制度の有無や、その適用範囲も忘れずに確認することが重要です。保証内容が不十分だと、トラブル時に想定外のコストが発生するおそれもあります。

導入後のサポート体制が整っているかどうかは、実際に依頼した店舗の口コミや評判を参考にするのも1つの方法です。

厨房に最適なエアコンを選んで快適な作業環境を整えよう

厨房にエアコンを導入することは、作業効率の向上やスタッフの体調管理に加え、店舗全体のサービス品質にも関わる大切な設備投資です。スポットエアコンやダクト式エアコンにはそれぞれ異なる特徴があり、厨房の広さやレイアウト、作業動線、そして換気の状態によって、最適な機種は変わってきます。

導入の際には、空調業者の施工実績や見積もり内容、アフターサポートの充実度なども含めて、じっくりと比較検討することが重要です。適切なエアコンを選び、信頼できる業者に依頼することで、厨房全体の快適さを保ちつつ、省エネや衛生管理の強化にもつながります。

本記事を参考に、自店舗にぴったりの空調環境づくりにぜひ役立ててみてください。

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