オフィスの適正温度とは?快適で生産性の高い職場をつくる温度管理方法を解説

「オフィスが暑すぎて集中できない」「冷房が強すぎて体調を崩しそう」そんな空調に関する社員の声に、対応に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。職場の温度管理は、生産性や快適性だけでなく、従業員の健康や企業の信頼性にも影響を与える重要なポイントです。

しかし、全員にとって「ちょうどよい」と感じられる温度設定は難しく、法令や省エネの観点からも判断に迷う場面は少なくありません。

そこで今回は、快適なオフィス環境づくりを目指す担当者のために、法的な基準やシーズン別・時間帯別の適温目安、実際に現場で使える温度管理の工夫まで、役立つ情報をわかりやすく整理しました。

空調に関する不満を減らし、働きやすい環境を整えたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

法律で定められたオフィスの適正温度とは

オフィスの室温には法律で定められた基準があり、労働安全衛生法に基づく「事務所衛生基準規則」では、空調設備がある場合の室温は18℃以上28℃以下とすることが求められています。

この基準は、職場で働く人の健康と快適性を守るために設けられたものであり、遵守されていない場合は罰則の対象になる可能性もあります。そのため、空調管理の担当者はしっかりと把握しておきたいポイントです。

なお、2022年4月の法改正により、従来は17℃とされていた下限温度が18℃へと引き上げられました。また、冷房を使用する際には外気温との差に配慮し、設定温度を必要以上に下げすぎないようにすることも重要です。

オフィスの温度が生産性と健康に与える影響

オフィスの室温は、従業員の集中力や体調、ひいては業務全体の生産性に大きく影響します。ここでは、オフィスの温度が従業員の生産性や健康に与える影響について詳しく解説します。

オフィスの温度は生産性を大きく左右する

オフィスの温度設定は、従業員のパフォーマンスに大きな影響を及ぼす重要なポイントです。一般社団法人日本建築学会の研究によれば、室温が適正な範囲を外れると、集中力や作業効率が著しく低下することが明らかになっています。

例えば、室温が28℃を超えると反応速度や判断力が鈍くなり、ミスの発生率が高まる傾向にあります。一方で、冷房が効きすぎて寒さを感じる環境では、身体がこわばってタイピングの速度が落ちたり、集中が途切れやすくなったりする場合もあります。

また、快適だと感じる温度は人によって異なり、「暑い」「寒い」といった温度に関する不満がストレスの原因になることも少なくありません。こうした状況を改善するには、空調環境の見直しが効果的です。

適切な室温管理で従業員の健康リスクを軽減できる

オフィスの室温が適切に管理されていないと、従業員の体調にさまざまな悪影響を及ぼすおそれがあります。例えば、夏場に冷房が効きすぎている環境では、いわゆる「冷房病」によって頭痛や倦怠感、胃腸の不調を訴えるケースも少なくありません。反対に、冬場に十分な暖房が行き届いていない場合には、手足の冷えや肩こりといった不調が慢性的な疲労感につながることもあります。

こうした健康被害は、欠勤や生産性の低下を招くだけでなく、職場全体の士気や雰囲気に悪影響を与える要因にもなりかねません。そのため、季節や時間帯に応じたきめ細かな温度調整が求められます。

また、快適な室内環境を整えるには、温度だけでなく湿度の管理も欠かせません。空気が乾燥しすぎるとウイルスが活性化しやすくなり、反対に湿度が高すぎればカビの発生や不快感の原因になります。

暑すぎる・寒すぎる環境は集中力と業務効率を低下させる

オフィスの温度が高すぎたり低すぎたりすると、従業員の集中力や業務効率に大きな影響を及ぼします。人の身体は一定の体温を保つためにエネルギーを消費する仕組みになっており、極端な気温下ではその分だけ脳の働きが鈍くなりやすくなるためです。

例えば、室温が高すぎると眠気や倦怠感を引き起こしやすくなり、反対に寒すぎる環境では手足の冷えや肩こりといった身体的不調につながり、結果として作業効率の低下を招くおそれがあります。

実際、米国のコーネル大学が行った研究では、室温を21℃から25℃に上げたことで、タイプミスが44%減少し、入力作業の量も150%増加したという結果が出ています。これは、快適な温度環境がパフォーマンスに大きく貢献することを示す代表的なデータといえるでしょう。

このように、オフィスの温度を適切に管理することは、単に快適性を確保するだけでなく、従業員の生産性や集中力を維持・向上させるためにも欠かせない取り組みです。

季節・時間帯別|理想的なオフィスの温度目安

オフィスの快適な空調管理を実現するには、季節や時間帯によって適切な温度設定を使い分けることが重要です。ここでは、具体的な季節・時間帯ごとの温度目安と調整のポイントを紹介します。

夏は26~28℃が目安|冷房は28℃を上限に調整

夏場のオフィス環境では、冷房の設定温度を26~28℃に保つことが適切とされています。これは環境省が推奨する「室内冷房温度28℃」というガイドラインをもとにした数値で、省エネと快適性の両立を図るうえで参考になる目安です。

とはいえ、実際に人が感じる温度=体感温度は、湿度や風の流れといった要素によって大きく左右されます。そのため、ただ28℃に設定すればよいというわけではありません。従業員の服装や作業内容、在室人数なども踏まえながら、状況に応じたきめ細かな調整が求められます。

例えば、湿度が高い日には除湿機能を併用したり、サーキュレーターで空気を循環させたりすることで、温度以上の快適さを確保することが可能です。

また、冷房の設定温度を必要以上に低くすると、身体の冷えからくる不調やパフォーマンスの低下を招くリスクもあります。

冬は20~22℃が適温|暖房は20℃を基本に設定

冬場のオフィス環境において、快適な室温の目安とされているのが20~22℃です。建築物衛生法でも、室温は20℃以上を保つことが義務づけられており、暖房を使用する際には20℃を基本として設定し、業務内容や在室人数に応じて柔軟に調整することが推奨されます。

設定温度が高すぎると、室内外の温度差が大きくなり、身体への負担や乾燥による不快感を招くことがあります。一方で、設定温度が低すぎると寒さによって集中力が低下し、作業効率にも影響を与えてしまう可能性があります。

こうした課題に対応するためには、例えば「社内での重ね着推奨」や「足元ヒーターの導入」などの工夫が効果的です。

朝晩は22~24℃に調整|外気温に合わせて快適性を確保

朝晩は日中に比べて気温が下がりやすく、同じ空調設定のままでは「寒い」と感じる社員が増えることがあります。特に夏場の朝は外気がまだ冷たく、冷房の効きすぎによる冷えが発生しやすいため注意が必要です。

こうした時間帯には、室温を22~24℃に調整するのが理想的です。朝の始業時や終業直前など、気温が大きく変化するタイミングに合わせて柔軟に設定を見直すことで、社員の体調管理にもつながります。

一方、冬の朝晩は外気温がさらに低下するため、暖房の設定温度をやや高めに保つことが快適な職場環境づくりのポイントになります。

時間帯ごとの気温差に応じた空調設定を心がけることで、従業員の快適性と生産性の維持に加え、省エネ効果の向上も期待できます。

午後は26℃前後が理想|暑さと眠気対策に効果的

午後のオフィスは、日差しの強まりや外気温の上昇により、室内が暑く感じやすい時間帯です。さらに、昼食後は血糖値の変動や眠気の影響も加わり、どうしても集中力が低下しがちになります。

こうした状況を踏まえると、午後の室温は26℃前後を目安に調整するのが理想的です。冷やしすぎによる不快感を避けながら、暑さによる倦怠感や眠気を軽減できるため、作業効率の維持にもつながります。

環境省の「冷房は28℃を目安に」というガイドラインを参考にしつつ、オフィスの広さや在室人数、日射の強さなどに応じて柔軟に調整することがポイントです。

オフィスの適正温度を維持するための実践対策

オフィスの適正温度を維持するには、空調の設定だけでなく、日射対策や空気の循環など複数の工夫が必要です。ここでは、実践的かつ効果的な温度管理の方法をご紹介します。

温湿度計を設置して室内環境を可視化する

オフィスの温度管理を適切に行うためには、まず現状の室内環境を数値で把握することが大切です。そこで有効なのが、温湿度計の設置です。

人によって暑さや寒さの感じ方には差があり、感覚だけで空調設定を決めると、全員が快適と感じる環境を整えるのは難しくなります。温湿度計を活用すれば、室温や湿度の状況を客観的に把握できるため、空調調整の判断がしやすくなります。

例えば、室温が28℃を超えている場合には、冷房の設定温度を下げるといった具体的な対応が取りやすくなります。また、湿度は快適性だけでなく健康面にも影響する重要な要素です。

サーキュレーターで空気を循環させる

快適な室温を保つには、エアコンの力だけに頼るのではなく、サーキュレーターを併用して空気を循環させることが効果的です。サーキュレーターには、室内の温度ムラを解消し、冷暖房の効率を高める役割があります。

例えば、冷房時には天井付近にたまりがちな冷気を床まで行き渡らせ、暖房時には足元に滞留しやすい暖気を上へ押し上げることで、室内全体の体感温度を均一に近づけることができます。これにより、エアコンの設定温度を必要以上に下げたり上げたりせずに済み、省エネにもつながります。

さらに、オフィスのレイアウトに合わせてサーキュレーターを複数台設置すれば、「この席だけ暑い」「ここだけ寒い」といった温度差による不満の解消にもつながるでしょう。

ブラインドやカーテンで日射をコントロールする

オフィスの温度環境を安定させるには、エアコンの設定に加えて、外部からの熱の侵入を抑える工夫も欠かせません。特に日差しが強まる時間帯は、窓から差し込む直射日光によって室温が上昇し、冷房の効率が低下してしまう原因となります。

こうした影響を軽減するには、ブラインドやカーテンを活用して日射を適切に調整することが効果的です。特に、外光の角度に応じて調節できる可動式のブラインドは、採光を確保しながら遮熱性能も発揮できるため、快適性と省エネの両立に役立ちます。

また、夏場には遮熱性に優れたロールカーテンや、窓に貼る反射コーティングフィルムなどを併用するのもおすすめです。

ゾーンごとにエアコンの温度設定を最適化する

オフィス全体を一律の温度で管理していると、「暑い」「寒い」といった感じ方に差が出やすくなります。特に、窓際やコピー機の近くなど熱がこもりやすい場所と、日陰になりやすいデスク周辺では、体感温度に大きな違いが生まれがちです。

こうした温度ムラを解消するには、執務スペース、会議室、休憩室などをゾーンごとに分け、それぞれに適した空調設定を行うのが効果的です。空間の用途や人の密度、外気との位置関係を考慮して個別に調整すれば、快適性が向上するだけでなく、冷暖房のムダも抑えられます。

近年では、エリアごとに温度制御が可能なマルチエアコンに加え、IoTと連携したスマート空調管理システムの導入も進んでいます。

時間帯や天候に合わせて空調設定を見直す

オフィスの空調設定は、終日同じ温度に固定するのではなく、時間帯や天候の変化に合わせて柔軟に調整することが重要です。

例えば、午前中は外気温が低く、冷房を使用しなくても快適な場合がありますが、午後になると日差しや人の活動熱によって室温が急上昇することがあります。逆に、曇りや雨の日には気温が思ったほど上がらず、冷房が効きすぎて寒さを感じる従業員が出るケースも少なくありません。

こうした状況に的確に対応するには、気温や湿度、天気予報をこまめに確認しながら、エアコンの設定温度を随時見直すことが効果的です。また、タイマー機能やゾーン制御を活用すれば、必要以上の冷暖房を避けつつ、エリアごとの快適性も確保できます。

空調管理に柔軟性を持たせることで、従業員の快適性を向上させるだけでなく、省エネの推進にもつながります。

適正温度の見直しが快適な職場づくりの第一歩

オフィスの温度管理は、従業員の健康や生産性、職場の快適性に直結する重要な要素です。法律で定められた基準を守るだけでなく、季節や時間帯、個々の体感温度の違いにも配慮しながら調整することで、職場全体のパフォーマンス向上が期待できます。

さらに、温湿度計の活用やゾーン制御、日射対策などを取り入れることで、省エネと快適性の両立も実現可能です。空調環境を見直すことは、設備投資や設定変更などの小さな工夫から始められます。まずは現状の温度管理を客観的に把握し、自社にとって最適な環境づくりに向けた第一歩を踏み出しましょう。

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