業務用エアコンの導入や買い替えを検討する際、多くの方が悩むのが「どのくらいの工事費用がかかるのか」「どんな工事が必要なのか」「信頼できる業者はどう選べばよいのか」といった点ではないでしょうか。エアコンのタイプや設置場所によって必要な工程や費用は大きく異なるため、事前の情報収集が非常に重要です。また、適切な業者を選ばなければ、追加費用や施工トラブルのリスクも高まります。
そこで今回は、業務用エアコンの工事費用相場から、追加費用が発生しやすいケース、具体的な工事の流れ、そして業者選びのポイントまでを徹底解説しています。快適で効率的な空調環境を実現するために、ぜひ参考にしてみてください。

目次
業務用エアコンの工事費用の相場とは?
業務用エアコンを導入する際、最も気になるのが設置にかかる費用ではないでしょうか。ここでは、代表的な機種ごとに工事費込みの相場を紹介します。
天井埋込カセット型の費用相場
天井埋込カセット型の業務用エアコンは、天井裏に本体を収納し、吹き出し口のみが見える設計のため、すっきりとした見た目で内装の雰囲気を損ねにくい点が特長です。一方で、設置には天井の開口工事が必要となることが多く、ほかのタイプと比べて工事内容が複雑になる傾向があります。
このタイプの導入費用は、機器代と工事費を含めて、60㎡規模で約75万〜100万円、90㎡ではおおよそ100万〜125万円、120㎡で2台設置する場合は200万〜300万円が目安となります。なお、配管やダクトの取り回し、室外機の設置条件などにより金額は上下するため、導入前には現地調査に基づいた詳細な見積もりを確認することが重要です。
天井吊型の費用相場
天井吊型の業務用エアコンは、天井内に埋め込めない空間でも導入しやすく、風を広範囲に届けられる点が特長です。設置時には本体を天井から吊り下げる必要があるため、強度の確認や固定のための工事が求められます。その分、壁掛型や床置型に比べて施工に手間がかかる傾向があります。
費用の目安としては、60㎡規模でおおよそ65万〜90万円、90㎡では約80万〜100万円、120㎡で2台設置する場合は150万〜250万円を見込むとよいでしょう。なお、室外機の設置場所や配管ルート、電源工事の有無などによって費用が変動する可能性もあるため、導入前には現地調査を行い、正確な見積もりを確認することが大切です。
床置型の費用相場
床置型の業務用エアコンは、天井スペースを確保できない現場や、設置・メンテナンスのしやすさを重視するケースに適しています。床に据え置くだけで設置が可能なため、工事の工程は比較的シンプルで、費用も抑えやすい傾向があります。
工事費を含めた費用の目安は、60㎡規模でおよそ50万〜75万円、90㎡では75万〜90万円、120㎡で2台設置する場合は140万〜230万円程度となります。ただし、室外機の設置環境や電源・配管の状況によっては、追加費用が発生する可能性もあります。こうした変動を踏まえ、導入前には信頼できる業者による現地調査と見積もりを依頼しましょう。
壁掛型の費用相場
壁掛型の業務用エアコンは、設置工事が比較的シンプルで、コストを抑えやすい点が特長です。室内機を壁面に取り付ける構造のため、天井裏や床スペースの確保が難しい環境にも柔軟に対応できます。
費用の目安は工事費込みで、60㎡規模ならおよそ55万〜70万円、90㎡では約70万〜85万円、120㎡で2台設置する場合は140万〜230万円前後となります。設置場所の条件や配管の長さ、電源の位置によって金額は増減するため、導入時には詳細な見積もりを取りましょう。コンパクトで扱いやすく、初めて業務用エアコンを導入する小規模店舗やオフィスにも適しています。
ビルトイン型・マルチ型の費用相場
ビルトイン型・マルチ型の業務用エアコンは、1台の室外機で複数の室内機を稼働させる構成や、ダクトを通じて天井内に機器を組み込む設計が特徴です。内装の雰囲気を損なわずに設置でき、ゾーンごとの温度管理にも対応できることから、ホテルやクリニック、美容室などでの導入が進んでいます。
費用の目安は、60㎡規模でおおよそ90万〜120万円、90㎡では110万〜150万円程度、120㎡以上で複数台を導入する場合は180万〜260万円を超えるケースもあります。ただし、ダクト施工やレイアウト設計に時間と手間がかかるため、初期費用は他のタイプより高くなる傾向があります。用途や空間に適した設計を行うためには、専門業者による綿密なプランニングが重要です。
業務用エアコンの工事で追加費用が発生しやすいケースとは?
業務用エアコンの導入工事では、見積もり時には想定していなかった追加費用が発生するケースも少なくありません。ここでは、追加費用が発生しやすい代表的なケースを具体的に紹介し、それぞれに備えるためのポイントを解説します。
室内機と室外機の距離が長い場合
室内機と室外機の距離が長くなると、それに伴って配管工事の負担が増し、追加費用が発生しやすくなります。冷媒配管やドレン配管、電源ケーブルなどを延長する必要があり、その分の資材費や施工費が加算される仕組みです。
さらに、配管の長さによっては冷暖房効率に影響が出る場合があるため、中継ポンプの設置や断熱材の追加が求められることもあります。特に広い店舗や複数のフロアにまたがるオフィスでは、配管距離を事前に十分考慮したうえで設置計画を立てることが重要です。設置場所に制約がある場合には、専門業者に相談しながら、最適な機器配置と費用をあらかじめ把握しておくと安心でしょう。
室外機の設置場所が屋上や壁面になる場合
室外機を屋上や壁面に設置する場合は、地上設置と比べて施工の手間が増えるため、追加費用が発生しやすくなります。特に屋上に設置するケースでは、クレーン車を使った搬入作業や、耐荷重の確認、架台の設置が必要になることが多く、それに伴い工事費が上乗せされます。
一方で壁面設置では、振動対策や落下防止措置に加え、安全基準を満たすための専門的な配慮が求められる点にも注意が必要です。建物の構造や周囲の環境によっては、工事が難航することもあるため、事前の現地調査と設置計画の綿密な確認が欠かせません。設置場所を選ぶ際は、見た目やスペースの都合だけでなく、安全性や今後のメンテナンス性も含めて慎重に検討することが重要です。
新規設置で電源工事が必要になる場合
業務用エアコンを新たに設置する際、建物の既存設備では対応できず、専用の電源工事が必要になるケースがあります。特に高出力タイプでは三相200Vの電源が求められることが多く、単相100Vしか引き込みがない建物では、分電盤の増設や電源の引き込み工事が発生します。
また、使用機種によっては回路の増設やブレーカー容量の見直しが必要になる場合もあり、その分の電気工事費が加算される可能性があります。こうした作業は、電気工事士の資格をもつ専門業者でなければ対応できません。トラブルを防ぐためにも、事前に現地調査を依頼し、導入予定のエアコンに適した電源容量が確保できるかどうかを確認しておくことが重要です。
既存機器の撤去・廃棄作業がある場合
業務用エアコンの買い替えや移設を行う際には、既存機器の撤去や廃棄作業が必要になることがあり、追加費用がかかる点に注意が必要です。古い機器を取り外す際には、冷媒ガスの回収や配管の取り外し、重機を用いた搬出などが伴う場合があり、作業の手間や設備の状態によって費用が大きく変わることもあります。
さらに、廃棄物の処分には家電リサイクル法に基づいた適正な対応が求められ、リサイクル料金や運搬費が別途発生します。こうした作業は業者に一括で依頼することで、安全かつスムーズに進めやすくなります。導入前には撤去の有無を確認し、見積もりに含まれているかを事前にチェックしておくことが、予算超過の防止につながります。
古い建物でアスベスト調査が必要な場合
建築年数が古い建物では、業務用エアコンの設置に先立ち、アスベスト(石綿)の使用有無を確認するための調査が必要になることがあります。特に2006年以前に建てられた建物では、天井やダクトの保温材にアスベストが含まれている可能性があり、解体や穴あけを行う際には、法令に基づいた調査および届出が義務付けられています。
仮にアスベストが使用されていた場合は、安全に除去するため、専門業者による対応が必要となり、その分の追加費用や工期の延長につながるおそれがあります。調査には数日から1週間程度かかることが多いため、スケジュールに余裕をもたせておくと安心でしょう。
設置場所の補強や特殊工事が求められる場合
設置場所の状況によっては、業務用エアコンの取り付けに際し、補強工事や特殊な施工が必要となることがあります。たとえば天井吊型を設置する場合、機器の重量に建物構造が耐えられるかを確認し、必要に応じて鉄骨の補強や下地材の追加が求められます。
また、屋上や外壁に室外機を設置する際には、振動や落下を防ぐために架台の設置や防振金具の取り付けが必要になるケースもあります。さらに、配管経路が狭い・長い・複雑といった条件下では、壁や床の一部を開口したり、天井裏に通したりといった工事が追加で発生する可能性も否定できません。
これらの特殊工事は標準工事費に含まれないのが一般的なため、現地調査によって設置条件を十分に把握し、詳細な見積もりを取得しておくことが重要です。
業務用エアコン工事の基本的な流れ
業務用エアコンを導入する際は、工事の流れをあらかじめ把握しておくことも重要です。ここでは、業務用エアコン導入時の一般的な工程を順を追って解説します。
新規取り付け工事の一般的な手順
業務用エアコンの新規取り付け工事は、まず現地調査から始まります。建物の構造や設置環境、電源容量などを確認し、最適な機種や配置を選定します。続いて、機器の搬入と据付を行い、必要に応じて配管や電源の引き込み、ドレン配管の施工を進めます。
室内機と室外機の設置が完了した後は、冷媒の真空引きおよびガスの充填を実施し、試運転によって動作を確認します。最終的には、使用方法の説明を行い、引き渡しをもって工事完了となります。
入れ替え工事の流れと注意点
業務用エアコンの入れ替え工事は、まず既存機器の撤去作業から始まります。冷媒ガスの回収や配管の切断、機器の搬出といった工程を慎重に進め、建物や内装を傷つけないよう十分な配慮が求められます。
その後、新しいエアコンを既存の設備にあわせて設置しますが、配管や電源の再利用が難しい場合は、新たに工事を行う必要があります。撤去と設置を同日に実施するケースでは、作業が長時間に及ぶこともあるため、業務への影響を踏まえたスケジュール調整が重要です。
現地調査から引き渡しまでの主な工程
業務用エアコンの設置工事は、まず現地調査から始まります。建物の構造や使用目的、電源や配管の状況を確認したうえで、適切な機種と設置場所を決定します。その後、見積もりを提示し、内容にご納得いただければ契約へと進みます。
工事当日は、機器の搬入・据付を皮切りに、配管・電源工事やドレン配管の施工を順次実施します。続いて冷媒ガスの真空引きと充填を行い、試運転と動作確認を経て問題がなければ作業は完了です。最後に使用方法の説明を行い、引き渡しとなります。
業務用エアコン工事にかかる時間の目安
業務用エアコンの導入を検討する際には、設置にかかる時間も重要な判断材料となります。ここでは、標準的な工期の目安に加えて、機種ごとの違いや設置条件、さらには繁忙期などによる遅延リスクについても解説します。
標準的な取り付け工事にかかる日数
標準的な業務用エアコンの取り付け工事にかかる日数は、一般的に1〜2日が目安となります。小規模なオフィスや店舗で、床置型や壁掛型など比較的簡易な機種を導入する場合は、1日で完了することもあります。
一方、天井埋込型やビルトイン型といった天井開口やダクト施工を伴う機種では、作業が複雑になるため、2日程度かかるのが一般的です。さらに、新規設置で電源工事が必要なケースや、既存機器の撤去を含む場合は、工期が延びる可能性もあります。
スムーズな工事を希望する際は、事前の現地調査で設置条件や配管ルートを把握し、段取りよく進められるよう業者と綿密に打ち合わせを行うことが大切です。
設置機種・条件による工期の違い
業務用エアコンの工期は、選定する機種や設置条件によって大きく変わる傾向があります。たとえば、壁掛型や床置型は比較的設置が容易なため、通常は1日で完了するケースが多く見られます。
一方、天井埋込型やビルトイン型は天井開口やダクト工事が必要となるため、2日以上かかる場合も珍しくありません。さらに、室外機の設置場所が屋上や壁面にある場合や、配管ルートが複雑な構造である場合には、補強工事や特殊施工が求められ、工期が長引く要因となります。
建物の構造や電源設備の状況も影響するため、正確なスケジュールを把握するには、事前の現地調査と計画的な施工準備が欠かせません。特に納期に制約がある場合は、余裕をもった日程で調整しておくことが重要です。
繁忙期や建物環境による工事遅延のリスク
業務用エアコンの工事は、夏前や年末といった繁忙期には業者の予約が集中しやすく、希望通りの日程で施工を行うのが難しくなることがあります。特に6〜8月は空調設備の需要が急増するため、スケジュールが逼迫しやすく、工事日の確保が遅れるリスクが高まります。
また、建物の環境によっても施工の進行に影響が出ることがあります。たとえば、天井が高い、配管経路が複雑、設置場所が狭小あるいは高所といった条件下では作業時間が延びやすく、工期の長期化につながるおそれがあります。加えて、築年数の古い建物では構造の確認や補強工事が必要になるケースもあり、さらに注意が必要です。
こうした遅延リスクを回避するためには、早めの計画立案と現地調査の実施、そして柔軟に対応できるスケジュール調整を行いましょう。
業務用エアコンの工事業者を選ぶポイント
業務用エアコンの設置を成功させるには、工事の技術力だけでなく、信頼できる業者選びも欠かせません。ここでは、安心して任せられる業者を見極めるために注目したい具体的な確認項目を紹介します。
現地調査や下見をしっかり行ってくれるか
業務用エアコンの設置を安心して任せるには、業者が現地調査や下見を丁寧に実施してくれるかどうかを事前に確認することが重要です。建物の構造や配管経路、電源設備の状況は現場ごとに異なるため、下見の有無がその後の工事に大きく影響します。
もし調査を怠ると、当日の作業中に工事内容の変更が生じたり、追加費用が発生したりするおそれもあります。信頼できる業者であれば、調査段階で詳細なヒアリングを行い、現場の課題や必要条件を正確に把握したうえで、適切な機種や施工プランを提案してくれます。こうした対応が、正確な見積もりと円滑な工事の実現につながるため、現地調査を確実に行う業者を選びましょう。
見積書に工事内容と費用が明確に記載されているか
業務用エアコンの工事を依頼する際は、見積書に工事内容と費用の内訳が明確に記載されているかを必ず確認してください。信頼できる業者であれば、機器代・配管工事・電源工事・撤去費用・諸経費といった項目をわかりやすく提示し、内容に不明点が生じないよう配慮してくれます。
一方で、「一式」などの曖昧な表現のみで構成された見積書は、後から追加費用が発生するリスクがあるため注意が必要です。特に初めての導入や大規模な工事では、費用の内訳を把握しておくことが予算管理や業者選定の判断材料になります。気になる点があれば契約前に確認し、納得したうえで進めることが大切です。
フロンガスの回収や処理に対応しているか
業務用エアコンの取り外しや入れ替えを行う際には、冷媒として使用されているフロンガスの適切な回収と処理に対応している業者かどうかを必ず確認する必要があります。フロンガスは地球温暖化やオゾン層の破壊につながるため、法令によって回収および破壊が義務付けられています。
対応していない業者に依頼した場合、環境への悪影響に加え、依頼者にも法的責任が及ぶ可能性があるため注意が必要です。信頼できる業者であれば、専用の回収機器や処理体制を備えており、作業後には「引取証明書」や「破壊証明書」の発行にも対応しています。安心して設置工事を進めるためにも、事前にフロンガス処理の体制について確認し、適切な対応が可能な業者かどうかを見極めましょう。
施工後のアフターサポート体制が整っているか
業務用エアコンは長期的に使用される設備であるため、施工後のアフターサポート体制が整っているかどうかは非常に重要な要素となります。万が一、不具合やトラブルが発生した際に、迅速な対応が可能な業者であれば、業務への影響を最小限に抑えることができます。
事前に、定期点検の有無や緊急時の連絡方法、保証内容などを確認しておくことが望ましいでしょう。
さらに、メンテナンス契約を提案している業者であれば、導入後も継続的に設備の稼働状況を把握しながら、必要に応じたサポートを提供してくれる傾向があります。こうした体制を整えた業者であれば、導入後も安心でしょう。
過去の施工実績や専門性が確認できるか
業務用エアコンの工事を依頼する際には、その業者に十分な施工実績と専門性が備わっているかを確認することが大切です。業務用空調は、機種や設置環境によって求められる対応力が異なるため、過去に同規模・同業種での施工経験があるかどうかが、信頼性を判断する一つの基準になります。
公式サイトやパンフレットで導入事例や利用者の声をチェックするほか、問い合わせ時に過去の実績を具体的に尋ねてみるのも有効です。また、業務用エアコンに関する専門資格を保有しているか、メーカーとの取引実績があるかどうかも重要な確認ポイントといえます。
業務用エアコン工事は信頼できる業者に依頼して安心・納得の導入をしよう
業務用エアコンの導入・工事は、設備の快適性やランニングコストに直結する重要なプロジェクトです。工事内容や費用はエアコンのタイプや設置条件によって大きく異なるため、事前に相場や工程をしっかり把握しておくことが大切です。
また、見積書の内訳やアフターサポート体制、フロンガス処理の有無など、業者選びのチェックポイントを押さえることで、予期せぬトラブルや追加費用の発生を防ぐことができます。安心・納得の空調環境を実現するためにも、信頼できる業者と連携し、丁寧かつ計画的に導入を進めましょう。